三菱化工機株式会社

加圧式ブローバックフィルタ 危険性の高い固液分離工程を安全に連続化

導入の背景・目的

株式会社高砂ケミカル様では、製品原価の削減を目標とした新たな製造プロセス(以下:新プロセス)の導入にあたり、危険性を伴う固液分離工程の安全性と処理能力の両立が求められていました。従来の装置では実現が難しかった「封じ込め」「加圧条件下でのろ過」「連続運転」をすべて満たす装置として、当社の加圧式ブローバックフィルタ(BBF)をご採用いただきました。 

三菱ブローバックフィルタ(BBF) 外観
真空、加圧ろ過機(ドラム型) 三菱ブローバックフィルタ(BBF) 外観
型式:PBF-SKD-0.7(運転圧力:0.05~0.1MPa)
三菱ブローバックフィルタ(BBF) 
真空、加圧ろ過機(ドラム型) 三菱ブローバックフィルタ(BBF) 内部

お客様の課題

既設機の状況・課題

高砂ケミカル株式会社 ご担当者様

従来は、バッチ式の上排型遠心ろ過機 42インチ1台を使用し、ろ過後のケーキ(結晶)を製品回収していました。本製品は結晶が鱗片状で細かく、ふわふわとした性質を持つため、遠心力によって圧密や目詰まりが発生し、液切れが悪く、脱水に時間を要する状況でした。
液切れを良くするために、一度装置を停止して手作業でケーキを崩していました。また、ケーキの洗浄性も悪いため、通液洗浄した後、手作業でケーキを崩してから、再度脱水を実施していました。
さらに、目標の脱液率を達成した後も、バスケット内のケーキを手作業で回収しており、開閉時のコンタミや作業負荷が大きいことも課題でした。

製品の生産・品質保持にかかる作業時間・工数

1回のろ過(給液→1次脱水→ケーキ洗浄→2次脱水→ケーキ回収)に約1時間、1日に5〜6回繰り返す運転を行っていました。
1バッチの製造に1日要しており、ケーキを崩す作業もあるため、1日1~2名は現場に付きっきりで運転している状況でした。
また異物のコンタミを防ぐため、
(1)ケーキを広げた目視確認、(2)ケーキ溶解後にチェックフィルタでろ過して目視で確認する二重の目視確認
という2重の確認作業も行っていました。

新プロセス導入にあたっての課題

既設機での単離(たんり:反応溶液から目的物質を結晶として取り出すこと)に課題がある中、
当社では、原価低減と生産効率向上を目的とし、複数の反応工程を結合し、各工程を連続化することで、単離工程を省略する新プロセスの開発を進めてきました。大幅な工数削減が期待できる一方、新プロセスに対応可能な装置の選定が難しいという課題が残っていました。

また、本プロセスでは、最終精製前の組成純度が従来よりも大幅に低下するため、精製(晶析)条件の見直しが必要となりました。
品質面では一定の目途がついたものの、再設定した条件を踏まえると、安全性に関する新たな懸念が生じていました。

安全性― 引火点を超える条件下での固液分離

精製(晶析)条件の見直しにより、溶媒の引火点を超える温度条件で固液分離(ろ過)を行う必要が生じ、静電気などを火種とした爆燃事故の
リスク対策のため、『封じ込め』条件下での運転が不可欠となりました。

従来装置では封じ込め不十分・閉塞・蒸散により運転不可

一方、従来の遠心ろ過機は密閉性が十分ではなく、安全性の確保が課題となっていました。
減圧式ろ過装置では、吸引側で溶剤が蒸散し、析出した結晶がろ過面に閉塞を引き起こし、安定した運転が難しいケースが見られました。
安全性・品質・連続性を全て満たす固液分離装置が見つからず、新プロセスに適した装置の選定が進まない状況でした。

検討開始のきっかけ

連続処理が可能な固液分離装置を探している中、別案件の固液分離検討において三菱化工機の製品紹介を聞く機会があり、
その際にBBFをご紹介いただいたのがきっかけです。
BBFを検討候補の1機種に加え、固体濃縮装置やバグフィルタ等他の固液分離方式も含めて、『連続処理が可能』『封じ込め』『加圧条件での使用』が可能かどうか比較検討を行うこととしました。

導入の決め手

さまざまな固液分離機を比較検討したところ、最終的に条件を満たす可能性があったのはBBFでした。
具体的には次の3点が実機導入の決め手になったと考えています。

加圧条件下での使用に対するコミットメント

当時、BBFは減圧条件での運転実績しかありませんでしたが、当社が求める「不活性ガスによる加圧ろ過」に対し、三菱化工機はコミットしてくれました。またプロセス検証・装置対応・設計面まで協力いただけたことも大きな後押しとなりました。

プロセス開発〜設備設計までの協働体制

加圧×連続固液分離プロセスの確立において、温度管理・封じ込め環境の維持・操作性など、多数の検討事項が存在しましたが、プロセス開発にもご協力いただき、開発したプロセスを前提とした設備設計が可能であったことも決め手のひとつですね。 

 コストダウン効果

今回の新プロセス導入は『コストダウン』を目的としていました。BBFの導入コストと、オペレーション変更によるランニングコストの削減効果を比較して、導入メリットが明確であるとの結果に至りました。その結果、前段のフロー合成導入スケジュールと合わせて導入時期が決定されました。 

導入後の活用方法と効果

作業時間(1日→半日)短縮と作業人数(2人→1人)の削減

従来の遠心ろ過機では、手作業が多く発生していましたが、BBFでは給液〜脱水〜洗浄〜ケーキ排出まで連続で行えるため、1名体制での運転が可能となりました。また、固液分離単体の操作時間は従来の1/2〜1/4、運転条件によっては1/8にまで短縮されました。

安定した処理性能と生産性の向上

厚みの薄いケーキでの連続ろ過と、圧密が起こりにくいろ過方法(微加圧)により、安定した処理性能を維持できており、実機試験でも、連続稼働時間が長くなるほど、効率が向上する傾向が得られました。

安全性の大幅な向上・コンタミリスクの低減

密閉環境で処理が完結するため、臭気漏れや溶剤曝露のリスクが解消され、爆燃リスクのあった従来工程に比べ大幅に安全性が向上しました。
またプロセス外からの異物コンタミのリスクとチェック作業が解消されました。

連続生産への関心向上・学会での評価

当社内で連続生産技術への関心が高まり、後続のiFactory®導入の土台となりました。
また、日本プロセス化学会国際シンポジウム(ISPC)での発表でも高い評価を受け、当社の知名度向上にもつながりました。

将来的なランニングコスト削減

付帯作業や製品充填等の自動化が必要ですが、さらなるランニングコスト削減の目途付けができました。

今後の展望・三菱化工機に期待すること

AI活用による運転条件の自動最適化

使用実績やデータ蓄積を踏まえ、AIを活用した運転条件の自動最適化が可能になれば、さらなる生産性の向上と多品目へのスムーズな適応が
期待できるのではないかと思います。

差圧調整の自動化

加圧型特有の課題である「ケーシング内とドラム内の差圧調整」を、自動で制御できれば、よりオペレーションの効率が上がると思います。

同じ課題を抱える企業へのメッセージ

直接的な装置の納入だけではなく、当社の必要とする仕様への理解と開発にご協力いただき、当社だけでは克服が困難な課題も、新たな開発や生産へのシーズとできることを証明していただきました。BBFの製品紹介を聞いていなかったら、ここまでたどり着くことができなかったかもしれません。カタログスペックにない部分で諦めている企業様も多くいらっしゃるかと思いますので、「対応できる可能性」を語っていただける場所があれば、さらなる開発の可能性も広がるかと思います。

導入いただいた企業のご紹介:株式会社高砂ケミカル 様

合成香料や医薬品の中間原料を製造する企業です。高砂香料グループの製造拠点のひとつとして、1978年に設立された掛川工場で主に食品香料、合成香料、医薬品原体および中間体、有機電子材料の受託生産を事業展開しています。また、連続フロー合成技術を用いた新しい生産設備の開発にも取り組んでおり、省エネルギー化や生産効率の向上に積極的に取り組んでいます。

本社:144-8721 東京都大田区蒲田5丁目37番1号ニッセイアロマスクエア17F
工場・研究所:437-1413 静岡県掛川市国安2746
設立:1957(昭和32)年6月4日
従業員数:68名
事業内容:合成香料及び食品香料の原料、天然精油、合成香料、医薬品原体および中間体、有機電子材料、 不斉合成触媒、写真工業用材料、感光性材料(フォトレジスト) の受託生産

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