下水道革新的技術実証事業「B-DASHプロジェクト」の取り組み
下水道革新的技術実証事業(以下、B-DASHプロジェクト)は、国土交通省が、新技術の研究開発及び実用化を加速することにより、下水道事業における低炭素・循環型社会の構築やライフサイクルコスト縮減、浸水対策、老朽化対策等を実現し、併せて、日本企業による水ビジネスの海外展開を支援するために実施しているプロジェクトです。
B-DASHプロジェクトには多くのテーマが設定されていますが、当社は「下水汚泥の地産地消エネルギー活用技術」と「バイオガスを利用した水素創出」に取り組んでいます。
B-DASHプロジェクト
⾼効率消化システムによる地産地消エネルギー活⽤技術の実⽤化に関する実証事業
本実証事業は、当社が日本下水道事業団、九州大学、唐津市との共同研究体で進め、2017年度B-DASHプロジェクトに採択されたものです。無動力撹拌式消化槽、高効率加温設備(熱可溶化嫌気性消化システム)他の革新的技術を組み合わせることにより、嫌気性消化を高効率で行いエネルギーを効率的に回収・利用、さらに排出汚泥量の低減、汚泥処分費の削減を実施します。また、再生可能エネルギーとして注目されるバイオガスの増量や、地域バイオマスの集約化・有効活用を図ることで、地産地消の再生エネルギーネットワークの構築を目指しています。

2023年には「高効率加温設備」第1号機を、唐津市浄水センターへ納入しました。これは、本実証事業において、排出汚泥の減量を可能とする消化設備向け高効率加温装置です。これにより、唐津市浄水センターで発生する汚泥全量を、高効率加温設備を含む消化設備で処理することになります。
本装置を組み込んだプロセスでは、従来よりも消化率を向上させ、消化ガスの増量を図るとともに、可溶化による汚泥の改質効果により脱水性が改善され、排出汚泥を大幅に削減させることが可能です。加えて当社の高効率加温設備は、脱水した消化汚泥の一部を熱可溶化するため、可溶化に必要なエネルギー消費量が少なく、かつ可溶化汚泥に必要な熱エネルギーにて消化槽の加温維持が可能な点が特長です。そのため、従来の嫌気性中温消化設備と同等の供給熱エネルギーにて運転可能でありながら、排出汚泥の減量化や消化ガスの増量効果が得られる優れたシステムです。
※日本下水道事業団 新技術導入制度 I類選定技術
実証研究の概要
B-DASHプロジェクト
水素リーダー都市プロジェクト ― 下水バイオガス原料による水素創エネ技術の実証
本事業は、当社が福岡市、豊田通商株式会社、国立大学法人九州大学との共同研究体で進め、2014年度B-DASHプロジェクトに採択されたもので、生活排水(下水)処理の過程で発生するバイオガスから水素を創出し、水素ステーションで供給する実証事業です。当社は、本事業にて研究計画立案、実証設備設計・建設、運転、データ採取を行いました。
福岡市は、2015年から中部水処理センターにおいて、本事業による世界初の水素ステーションの実証を産学官で取り組んでおり、この水素ステーションを軸に、水素エネルギー関連事業の振興を目的として、「水素リーダー都市プロジェクト」を推進しています。当社も計画段階から現在に至るまで、このプロジェクトに深く関わり、ともに水素社会実現に向けた取り組みに協力してきました。
また、当社が参画する有限責任事業組合福岡市グリーン水素活用推進協議会*1は、九州大学と福岡市グリーン水素活用に向けた連携協定を2022年8月に締結しました。そして、実証設備を国から福岡市に移管し、2022年9月から商用水素ステーションとして運営を行っています。
*1 福岡市と西部ガス株式会社、株式会社正興電機製作所、豊田通商株式会社、西日本プラント工業株式会社、三菱化工機株式会社が、福岡市水素ステーションの機能強化を図るとともに、水素の普及に向けた活動を共同で実施することを目的として設立した共同体
受賞実績
内閣府「つなげるイノベーション⼤賞(第14回産学官連携功労者表彰)国⼟交通⼤⾂賞」