三菱化工機株式会社

新規開発の揺動型生物膜式排水処理設備を東海パルプ(株) 島田工場に建設・完成

このたび、三菱化工機(社長:籔内 康雄)は、東海パルプ(株)殿 島田工場向けに新規に開発した揺動型生物膜式排水処理設備を建設・完成致しました。

今回新規に開発した揺動型生物膜式排水処理設備は、平成9年から4年間にわたりテストを実施し性能評価を行ってきた揺動型生物膜式固定床担体を使用しており、従来困難であった製紙排水の直接処理を実現したものです。

東海パルプ(株)殿 島田工場では、従来より製紙の排水処理には、抄紙系では凝集沈澱処理法を、また古紙系では凝集沈澱処理法に加えて生物処理(活性汚泥処理法)を用いて放流基準内にまで下げる処理を施した後、大井川へ放流してきました。しかし、従来以上に排水路内で発生するスライム(微生物を主とした泥状の付着物)等による流況環境の改善を図るためBODの更なる削減を目指し、本排水処理設備の建設となったものです。

これまで製紙排水には、抄紙系及び古紙系ともに繊維性の浮遊物質(SS)が多く含まれているため、この繊維性SSを除去する凝集処理法(沈降分離装置又は浮上分離装置)が組み込まれた排水処理フローが、広く採用されてきました。特に生物処理を行う場合は、繊維性SSを除去せずに生物処理系へ流入すると、活性汚泥処理法では活性汚泥の有効汚泥量が減少、生物膜処理法では接触材充填部分の閉塞等の、悪影響がありました。

今回新規に開発した揺動型生物膜式排水処理設備では、この繊維性SSの除去用の前処理装置は組み込む必要がなく、直接生物処理が可能となりました。今回は、後処理としての凝集沈殿処理法は必要ですが、既設凝集沈殿設備の再利用が図れること及び前処理設備が不要なことから建設コスト、ランニングコストの節減が図れ、また設備の設置スペース等も縮減できるため大きなメリットをもたらすものです。

生物処理には、活性汚泥処理法、生物膜処理法などがあり、生物膜処理法の中にも固定床(フリンジ又はハニカムを使用したもの)、流動床等の処理方法があります。当社は、揺動型生物膜式排水処理設備に使用する揺動型生物膜式固定床担体(フリンジを使用したもの)の優位性に平成9年から着目しテストを継続してきたものであり、東海パルプ(株)殿 島田工場の抄紙系排水処理において直接処理を実現したものです。

この揺動型生物膜式固定床担体は、ポリエステルとアクリル繊維を組み合わせた合成繊維製のフリンジ糸から製作されたもので、親水性のあるアクリル繊維を使用し、さらに特殊加工を施した繊維表面にある無数のしわが微生物の付着を容易なものとしています。

このフリンジ糸で構成される揺動型生物膜式固定床担体を生物膜の接触材充填部分にセットすることにより、次の4点の効果が得られるものです。

  • 接触材自体が揺動するので、生物膜上では常に汚泥の増殖と剥離が繰り返され、過剰増殖や一斉剥離現象が起こらない。
  • 繊維性SSが、過剰に付着しないため、閉塞が起こらず逆洗機構を必要としない。
  • 流入繊維性SSの影響を受けにくいので、繊維性SS除去のための前処理を必ずしも必要としない。
  • 植種時の汚泥付着が速やかに行われるので、処理の立ち上がりが早い。

上記の4点の特長をもつ担体を使用し、さらに次の設備内の改善・工夫も行うことにより、繊維性SSを除去せず直接排水処理を実現したものです。

  • 担体への繊維性SSの付着を確実に阻止する曝気方式の採用。
  • 担体及び槽内の清掃が、し易いユニット化の採用。
  • 夾雑物による架橋が起こりにくくする担体の配列。

今回完成した揺動型生物膜式排水処理設備は、溶解性BOD 85mg/lである低濃度の原水(30,000m3/D)を10mg/l以下に処理しするもので、原水を中和する中和槽、回転ドラムスクリーンによる夾雑物除去装置、生物反応槽及び曝気用ブロワ設備から構成されています。生物反応槽には、フリンジユニット(縦2.5m×横3.2m×高さ6.2m)が42基設置されています。

東海パルプ(株)殿 島田工場の原水には、800mg/l程度の繊維性SSが含まれているため、今回完成した揺動型生物膜式排水処理設備では生物膜処理した後、既設凝集沈殿設備を再利用し繊維性SSを20~10mg/lまで除去しております。同工場では、将来排水処理設備を現在の30,000m3/Dから90,000m3/Dまで拡張する計画です。

当社は、揺動型生物膜式固定床担体を使用した設備を、浮遊物質SSが多く、BODが低濃度の製紙排水へも適用できることが実証されたので、今後製紙業界及び同様の問題を抱えている食品業界へも積極的に拡販していくことにしています。