超臨界二酸化炭素利用による医薬品晶析技術の実用化研究装置を完成
三菱化工機株式会社(社長:籔内康雄)は、このたび川崎製作所内に新 規に超臨界二酸化炭素利用による医薬品晶析(以下、「超臨界晶析」という)技術の実用化研究装置を完成した。
超臨界晶析は、超臨界二酸化炭素(CO2)に溶解した医薬品原料を、バルブを介して大気圧状態のチャンバーに一気に噴出させることにより、微細な医薬品粒子を得る方法であり、この超臨界晶析に関する研究は、現在各大学、公的研究機関、民間研究所等にて進められているが、それぞれまだ 実用化のテスト段階にある。
現在、医薬品業界では、種々の機能を有する薬剤の研究が進められており、その中の1分野であるDDS(Drug Delivery System)の分野では、薬剤の溶解性を制御するため、薬剤の微粒子化、コーティング方法が研究されている。
医薬品の晶析は、従来有機溶媒等に溶解した医薬品を攪拌槽内において冷却し、結晶を得る方法が用いられてきたが、この方法では上記のDDS用医薬品等に要求される非晶質の微細な粒子を得ることは、技術上非常に困難であった。これを超臨界二酸化炭素を利用し晶析する技術により、非晶質の微結晶が容易に得られる可能性が高いため、本技術の研究が進められている。
当社は、これまでに超臨界二酸化炭素を利用した天然原料から医薬品、香料、化粧品などの有用成分を抽出する技術をいち早く実用化し、以来15年以上の実績と経験を有している。そして、これまでにも売用の実験装置により医薬品の超臨界晶析テストを実施しているが、今回晶析用の実用化研究装置を新規に設置したことにより、顧客との協力関係を緊密なものとし実用化研究をより加速するもの。
今回完成した研究装置は、500mlと1,000mlの2つの超臨界槽を装備しており、30MPa、300℃まで次の2つの方法による使用が可能であり、さらに超臨界槽に攪拌機を備えて一層の性能の向上を図っている。
- 急速膨張法:
500ml槽では、急速膨張法という「槽内で医薬品等を超臨界二酸化炭素に溶解 した後、大気圧状態の微粒子捕集槽に噴霧することにより医薬品等を結晶化させ微粒子を得る方法」の技術に使用できる。(500ml槽には、覗き窓が付けられており、超臨界流体中の原料の溶解状態が観察できる。) - 貧溶媒法 :
1,000ml槽では、貧溶媒法という「別容器で溶媒に溶かした医薬品等を、超臨界状態にしたこの1,000ml槽の中に噴霧することにより医薬品等の溶解度を下げ微結晶を得る方法」の技術に使用できる。
本実用化研究装置は、既に医薬品メーカー数社からの依頼テストを受入れ・実施しており、今後も顧客との共同研究及び依頼テストを積極的に行い実用化への目処付けを進める。
また、超臨界二酸化炭素を利用した本技術は、晶析だけでなくマイクロカプセルの製造、コーティングなどへの応用により医薬品製造の複数の工程での利用及び健康食品分野における有効利用も期待できるため、この方面への実用化にも注力する。
当社では、現在、容量10L規模程度までのパイロット装置を年間5台程度販売する計画にあり、さらに2002年度までには50L以上の実用装置を販売する計画を進めている。
超臨界晶析装置の価格は、次の通り。
- 標準仕様の容量10L規模のパイロット装置 : 1台約5,000万円。
- 容量50Lの実用装置 : 1台約1億円。