【水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗プロジェクトストーリー Vol.3】
共創する楽しさがある!
川崎のソウルフードで、未来を身近に。

11月2日、川崎市で「101-Next New Challenge -次の100年へ向けた、新たな挑戦のはじまり」をテーマに、さまざまなイベントが同時開催。歩行者空間となった川崎駅前の市役所通りは、スポーツやダンス、アート、音楽、フードなど多彩なカルチャーを楽しむ「みんなの川崎祭」が開催され、若者やお年寄り、家族連れで賑わい、みんなが楽しむ姿で溢れていた。そして、数ヶ月前から準備してきたプロジェクト「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」がいよいよこの日、初出店を迎える!

  • ひとりの学生のアイデアが形になった日

    「脱炭素ラーメン」。 この、ひとりの学生のアイデアがもととなり、まちや企業が動き出し、CO2を排出しない水素オーブンの開発、出店にまで発展したプロジェクト「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」。市役所広場では、11時30分からの開店を前に、朝からブース設営の準備が進められている。主役の水素オーブンもスタンバイ。「ランチはこの脱炭素ラーメンを」と心に決めているが、その前に、注目のイベントをひとつご紹介。

    有識者や著名人を迎えて、川崎を起点に「まち」と「社会」の未来を考え、広げていくトークセッション「Colors,Future!Summit2025」の幕開けとしてカンファレンスが行われた。三菱化工機から常務執行役員の林安秀がスピーカーとして参加。その模様をレポートする。

  • テーマは「100周年を超えた川崎からはじまる新しいチャレンジ」

    川崎×人×技術のEnergyでイノベーションを生み出す「MKKプロジェクト」をスタートさせた三菱化工機、「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」の開業を見据えるDeNA傘下のプロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」、市制100周年を超え、次の100年への一歩を踏み出した川崎市の、各代表者が登壇し、それぞれの未来に向けた挑戦を語るトークセッションだ。

    ※写真は左から進行役・タレントの宮崎瑠依さん、三菱化工機常務執行役員の林安秀、川崎ブレイブサンダース取締役会長の元沢伸夫さん、MUIC Kansai専務理事の廣瀬満知さん、タレントの藤井サチさん、川崎市シティプロモーション推進室の小池智也さん。

  • 垣根を超えた“共創”が
    キーワード

    川崎市シティプロモーション推進室の小池智也さんからは、これから取り組みたいものの一つに社会課題があげられた。「人口減少や担い手不足、環境・エネルギーなど社会が抱える課題は多様化・複雑化が進んでおり、行政だけで解決するのはもはや不可能。市民や企業、行政がそれぞれの強みを活かす“共創”をキーワードに、社会課題解決へのアプローチを川崎で生み出し、発信していきたい」。垣根を越えた共創をこれまで以上に進めていく姿勢だ。

  • アリーナを中心にした
    エンタメが集まる
    新しいまちづくり

    2030年、京急川崎駅から徒歩3分の場所に、川崎新アリーナシティが開業予定だ。スポーツだけではなく、音楽やアート、ホテル、パーク、テクノロジーなどを兼ね備えた複合エンターテイメント施設となる。川崎ブレイブサンダース会長の元沢伸夫さんは、「アリーナの照明には大量のエネルギーが使われます。せっかくなら環境に配慮した最先端の設備を導入したい。ここ川崎は工業地帯で発展し、かつては公害で苦しんだ歴史もありますが、いまはそれを乗り越え、最先端の環境技術をもった企業がたくさん存在します。水素エネルギーを活用できる三菱化工機さんにお話しを伺い、知見やお力を借りながら、世界最先端の技術を取り入れたクリーンなアリーナを目指しているところです」と、5年後の未来に向け、まさに川崎からはじまる新しいチャレンジが語られた。

  • 循環型クリーンエネルギー
    システムへのチャレンジ

    川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」において協業する三菱化工機の林は、「アリーナで熱狂するエネルギーと水素エネルギーを掛け合わせることで、新たなイノベーションを生み出したい」という。「具体的には、大量に出る食べ残しや食料残さからバイオガスを取り出して水素を生み出し、CO2を出さずにアリーナの電力を供給するという、循環型クリーンエネルギー技術をアリーナに導入したいと思っています」。共創により、カーボンニュートラルに向けた循環型社会への壮大なチャレンジがここから始まろうとしているのが会場内の聴衆にも伝わり、川崎の未来への期待感がさらに高まった。

  • 共創力を発揮した
    「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」

    そしてこの後、三菱化工機元祖ニュータンタンメン本舗などとのコラボによる「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」を「みんなの川崎祭」で限定オープン。水素エネルギーによる調理で、人気メニュー「まぜタン」などを販売する。ブースのある市役所広場と中継でつながり、この脱炭素ラーメンを発案した大学生で、「脱炭素をもっと楽しく」をテーマに活動する「まるっとサステナCAMP」のメンバー、田村奈々さんの声が会場に響いた。

     

    「脱炭素の取り組みを身近に感じてもらいたいという何気ない思いつきが、いろいろな企業に関わっていただき、たった数カ月で形になるというのは初めての経験。大きなプロジェクトになり驚きはありましたが、実際にこの日を迎えて、ようやく実感が湧いてきた感じです」(田村さん)

    若者の脱炭素化への思いが具現化したことも、市民や企業、行政の共創力があってこそ。社会課題の実現のキーワードは、まさに“共創”なのだ。

  • ほしい未来は
    みんなでつくる!

    市役所広場に出てみると、「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」のブースには多くの人が行列をなし、今か今かと水素でつくられる麺の提供を待ちわびていた。会場内でトークを聞いていたお客さまも列に加わるなど、興味津々の様子で、注目の高さがうかがえる。

    ちなみに「みんなの川崎祭」の今年のテーマは「ほしい未来はみんなでつくる!」。「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」プロジェクトは、いずれ来るであろう脱炭素社会の実現に向けて、まさに官民学みんなでほしい未来をつくるための実証実験でもあるのだと、あらためて実感。

  • 水素吸蔵合金配送システムの
    仕組みも身近に

    今回使う燃料はこちらの水素。三菱化工機の大川町にある工場で、小型オンサイト水素製造装置「HyGeia」を使って製造した水素を、那須電機鉄工が開発した水素吸蔵合金タンクに充填し、この会場まで運搬。このタンクの中に水素がたくさん詰まっている。水素を金属内に可逆的に吸収・放出する合金を使用しているため、こんなにもコンパクトに持ち運びできるという。これを水素オーブンにつなげて、麺を茹でるエネルギーに。

    隣に設置されているのは日本フイルコンによる水素燃料電池で、水素吸蔵合金タンクから水素を放出するための温度調節や、スープを加温するためのホットプレートの電源などに使われる。水素エネルギーの供給が可能となる、この水素吸蔵合金配送システムの仕組みについても身近に感じられるチャンスとなっている。

  • エネルギーが、
    環境にやさしくなっただけ

    水素オーブンで沸かしたお湯で麺を茹でるのは、元祖ニュータンタンメン本舗の広報担当・三浦拓真さんだ。「茹で加減や茹で上がりは、ふだん使うプロパンガスと何ら変わりません。水素は燃焼してもCO2を出さないですし、匂いもない。環境にやさしくなっただけ。

    また、私たち料理人は通常どおりに営業するだけですが、こういう新たな取り組みは、最初が難しく苦労が大きいもの。そうしたみなさんの共創のもと、川崎のど真ん中で川崎のソウルフードを、水素を使って提供できることをうれしく思います」と、実際に水素オーブンを使っての思いを語ってくださった。

  • おいしさを楽しみながら、
    未来を身近に!

    「もちろん、麺のおいしさも変わらずそのまま」と三浦さん。メニューは「まぜタン」「チーズまぜタン」「鬼辛まぜタン」の3種類で、一番人気は「まぜタン」とのこと。挽肉やニンニク、卵をからませた絶妙なスープとよく混ぜてからいただきます。この中太麺のモチモチ感がやっぱりたまらない!唐辛子がピリリと効いているものの、卵も相まってほどよい辛さ。これが、水素で調理された未来の味。店の味に変わりはないが、感慨深いものがある。歩行者空間となった広々とした市役所通りには、たくさんのテラス席が設置され、思い思いに利用でき、お腹も心も満たされた。

  • 脱炭素の取り組みで、
    おいしい笑顔をつくる

    ブースには水素オーブンの設計・開発を担当した中西製作所の片山岳陽さんも来てくださり、取材を受けたり、関心のある来場者へ水素オーブンについて説明をされていた。中西製作所は、これまで多くのおいしい笑顔をつくってきた学校給食や外食産業の厨房機器メーカーだ。

    片山さんに今回のイベントを通しての感想を伺った。「このイベントへの出店はとても貴重な機会。水素オーブンを間近で見ていただいたり、水素調理の魅力をお伝えしたり。実際に脱炭素ラーメンを召し上がっていただき、未来を身近に感じてもらえたらうれしいです。これをきっかけに、私たちも水素調理機器でもおいしい笑顔をつくれるよう開発に取り組んでいきたいと思っています」。

  • 技術力の共創で、
    脱炭素社会へ前進

    今回、水素吸蔵合金配送システムと水素オーブンを組み合わせて実証実験した感想を、三菱化工機 水素・エネルギープロジェクト部の今村圭吾に伺った。

    「吸蔵合金のなかには温度のバランスによって水素の放出量が変わるため、必要な水素の量に合わせて温度を調節したり、逆に水素オーブンのバーナーを調節してもらったり、お互いの技術の組み合わせ方におもしろさを感じました。いろんな会社の技術が組み合わさって、水素社会に向かって進んでいるというのは非常にいいことだなと実感しています」

  • 循環型社会の実現に向けた課題を、
    共創する楽しみに

    「KAWASAKI SOUL」第1弾としての「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」は今回限りではなく、今後イベントなどへの出店も計画中だ。また、どこかで出合えることをお楽しみに!

    そして「KAWASAKI SOUL」第2弾の計画も着々と進行している。食料残さや廃油脂などの廃棄物からバイオマスエネルギーや肥料をつくり、川崎産ホップを栽培し、ゆくゆくは地ビールづくりまで⁉ 地元企業と共創し、川崎市のなかで循環型社会の実現に向けた課題に取り組む、次なるプロジェクトにもご期待ください。

  • 川崎市・報道発表資料

    川崎市リンク

    報道発表資料(川崎のソウルフード「元祖ニュータンタンメン本舗」を脱炭素化!「水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗」が11月2日「みんなの川崎祭」で限定オープン)

    水素|ノー炭炭(タンタン)メン本舗

     

  • 元祖ニュータンタンメン本舗

  • まるっとサステナキャンプ

  • 株式会社中西製作所

  • 株式会社ヒートエナジーテック

  • 那須電機鉄工株式会社

  • 日本フイルコン株式会社

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