三菱化工機株式会社

気候変動への対応

気候変動関連の情報開示

国際的な気候変動関連の情報開示のフレームワークについて、TCFD提言への賛同企業としてこれに準拠した開示を行っているほか、2022年からCDP※への回答を行っています。

※CDPは、ロンドンに本部を置く国際的な非政府組織で、世界の主要企業の環境活動に関する情報を収集・分析し、企業の取り組みを「A、A-、B、B-、C、C-、D、D-」の8段階で評価するものです。当社グループは2022年より気候変動質問書、2023年より気候変動質問書に加えて水セキュリティ質問書への回答を行っています。(2022年気候変動質問書は「C」評価)

ガバナンス体制

ガバナンス体制図

当社取締役会は、気候変動問題への対応を経営上の重要課題の1つであると認識しており、リスク管理の観点だけでなく事業創出の観点からも重要な施策の意思決定をするとともに執行状況を監督しています。

重要課題に対する進捗を測る経営指標と目標(「指標と目標」参照)を定め、当社取締役社長を統括責任者として気候変動問題への対応を含むサステナビリティに関する活動を全社的・継続的に推進する常設委員会である「サステナビリティ委員会」を中心とした推進体制のもと、進捗モニタリングをしていきます。

また、当社取締役会が定期的に当委員会から当社グループの気候変動問題への対応を含むサステナビリティへの取り組み状況に関する報告を受ける体制を構築しています。

戦略(シナリオ分析)

当社グループは2100年時点の世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して、1.5℃以下に抑制しながら経済成長を目指すシナリオ(以下「1.5℃シナリオ」)(※1)と現状ベースで化石燃料をエネルギーの主体として経済成長を目指し同4.0℃上昇することが想定されるシナリオ(以下「4℃シナリオ」)(※2)の2つの気候変動シナリオを設定し、2030年における各事業への影響を分析しました。

1.5℃シナリオでは、移行リスクとして、例えば炭素税の導入による資材・エネルギーコストの上昇、それによるエネルギー効率の低い設備需要の減少、並びに化石資源関連産業及び化石燃料を使用する設備向けの製品の需要減少などが想定される一方で、脱炭素化に対応した製品・技術へのニーズが一層高まることが想定されます。当社グループは水質汚濁防止・大気汚染防止などの環境分野をはじめとして社会課題に対応した装置・設備の設計・製作・建設で多くの実績を有しています。これらの要素技術は脱炭素化に対応する水素に係る製品・技術や藻類の培養・活用にも応用できる当社の強みと考えており、事業機会も十分に存在するものと考えています。

4℃シナリオでは、気候変動による自然災害の激甚化によるリスクに対応するレジリエントな装置・設備ニーズに対して当社グループの既存製品・技術を提供する機会が生ずるものと考えていますが、洪水・海面上昇等による調達先や輸送網といったサプライチェーンへの影響や工程の遅延、及び平均気温上昇に伴う作業効率の低下などによる物理的リスクの方が大きいものと考えています。

※1 IEA NET Zero by 2050-A Roadmap for the Global Energy Sector、IPCC第6次報告書SSP1-1.9の気候影響、環境省や気象庁などの開示情報
※2 IPCC第6次報告書SSP5-8.5シナリオ、環境省や気象庁などの開示情報

気候変動がもたらすリスク

区分 分類 項目 内容 影響度※3 評価軸※4 当社の対応
移行リスク 政策・
法規制
CO2排出削減に係る税・規制の導入・強化※5 炭素税の導入(資材) 中~長期
  • 製品設計の工夫による資材使用料の削減、低CO2排出材料への代替(調達先への働きかけを含む。)
  • エネルギー使用プロセスの効率化、省エネ設備のさらなる導入
  • 再生可能エネルギー設備の設置
  • デジタルを活用したE&M※6等による省力・省エネ促進
再生可能エネルギーの普及に伴う電力コスト増 中~長期
製品と
サービス
社会的な要請の変化 エネルギー効率の低い設備の需要減 短~中期 エネルギー効率の高い製品の開発・販売を継続
化石燃料関連設備の需要減 短~中期 CCUS設備の開発・販売を推進
油清浄機・部品を代表とする単体機械の需要減 短~中期 再生可能エネルギー向け等の固液分離技術の新たな用途の開発を推進
物理的リスク 急性 風水害激甚化 自然災害の激甚化による工程遅延やサプライチェーンへの影響発生 中~長期
  • リスクを考慮した工期の設定
  • 作業空間における温度管理設備の整備
  • BCPの強化
慢性 気候変動 平均気温の上昇により、プラント建設・機器製造等の作業効率が低下 中~長期
海水面の上昇、降雨パターン(豪雨と干ばつ)の長期的変化によって、自社事業所や取引先の事業継続リスクの増加や防災・適地移動コストの発生 短~長期

※3 【影響度の評価】 大:売上高50億円以上 中:売上高10~50億円未満 小:売上高10億円未満
※4 【時間軸の評価】 長期:2050年までに影響あり 中期:2030年までに影響あり 短期:2025年までに影響あり
※5 資材電力の調達コスト増(利益減)は、利益率10%と仮定し、影響額÷10%=売上額の換算で影響度を評価
※6 エンジニアリング&マニュファクチャリング

気候変動がもたらす機会

区分 分類 項目 内容 影響度※3 評価軸※4 当社の対応
移行機会 製品と
サービス
社会的な要請の変化 レジリエント/省エネルギーなプラント•設備の需要増 中~長期

【戦略的事業領域:水•食•自然災害等の課題解決に向けた次世代技術開発事業の取り組み】

プラント•設備に関する研究開発の推進

バイオガスの需要増 短~長期

【戦略的事業領域:持続可能な循環型社会推進事業の取り組み】

  • バイオガス発電への取り組みを継続
  • 廃プラリサイクルに関わる新規事業参入
  • CCUS関連事業に関わる新規事業参入(エンジニアリング•水素製造からの回収等)

【戦略的事業領域:水素を核としたクリーンエネルギー事業の取り組み】

  • 水素事業の強化
  • 藻類由来のSAFの技術開発
廃プラスチック利用の需要増 中~長期
CCUS関連の需要増 中~長期
水素の需要増 中~長期
藻類由来のカーボンニュートラルな燃料・飼料等の需要増 中~長期

※3 【影響度の評価】 大:売上高50億円以上 中:売上高10~50億円未満 小:売上高10億円未満
※4 【時間軸の評価】 長期:2050年までに影響あり 中期:2030年までに影響あり 短期:2025年までに影響あり

リスク管理

気候変動問題に関連するリスクの管理については、ガバナンス体制の項の図で示した通り既存の「リスク管理委員会」と相互連携しています。その役割分担は、常設委員会である「サステナビリティ委員会」においてリスクの抽出・特定を管掌するとともに、「リスク管理委員会」においてリスク対応方針の決定・進捗管理を管掌しています。

「リスク管理委員会」においては、全社リスク管理において対象とするリスクの類型に気候変動問題に関連するリスクがあることを明示するとともに、「サステナビリティ委員会」で重要と判断されたリスクを全社重要リスクとして管理し、その対応状況を定期的に取締役会に報告しています。

これらの活動を通じて、全社的な短期・中期・長期のリスクを抽出し、評価及び対応策の検討を行い、取締役会にて監督を行っています。

指標と目標

当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、バリューチェーンでの温室効果ガス(GHG)排出量を算定・把握し、2つの目標を設定し取り組みを進めてまいります。

当社グループのGHG排出量(Scope1、2)を2050年までにNet Zeroへ

当社グループは、工場・オフィスからのGHG排出量を2050年までに排出量実質ゼロとしてまいります。この長期目標の達成に向けて、再生エネルギー由来の非化石証書付きの電力受給契約のほか、主力工場における太陽光PPAモデルによる使用電力の一部再生エネルギー化を実施する等により、2030年までに2021年度比で50%以上の削減を図ってまいります。

社会課題への貢献に寄与する新規事業領域の成長を加速

当社は、「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」を掲げ、CO2・気候変動や資源循環などの5つの社会課題を抽出し、持続可能な発展に挑戦し、快適な社会の実現に向けて4つの戦略的事業領域を設定しています。

戦略的事業領域のうち、①持続可能な循環型社会推進事業、②水素を核としたクリーンエネルギー事業、③デジタルを活用した省力・省エネ事業の3つは、当社グループのバリューチェーン全体のCO2排出量削減につながるものであり、2035年までに確立すべき中核事業と位置づけて取り組みを進めています。

①は、産業や一般家庭から排出される廃棄物を再資源化する事業であり、有機性廃棄物からのバイオガス回収、有価物リサイクルにおける廃プラスチックリサイクル、カーボンリサイクルにおけるCO2回収等のプロセスに代表されるものです。可溶化技術、バイオガス化技術、膜・吸着等分離技術など当社技術の活用・深化により展開を図ってまいります。

②は、CO2排出低減に貢献する水素を核としたクリーンエネルギーの生成・利活用に関わる事業であり、水素製造におけるグリーン水素・ブルー水素、水素サプライチェーンにおける水素輸送・貯蔵・供給、藻類等の生物由来の創エネルギーなどに代表されるものです。再生可能エネルギー創生技術、水素製造技術、高効率水電解技術、吸蔵合金技術、培養・抽出技術など当社技術の活用・深化により展開を図ってまいります。

③は、デジタル技術を活用し、工場のエネルギー消費や廃棄物の極小化に貢献するE&M及びO&M事業であり、EPCの自動化・高効率化技術、3Dエンジニアリング、RPAなど全社横断的に当社技術を活用・深化することで機能を発揮することを目指します。新たに設置した「技術開発・生産統括本部」と「DX推進部」を中心に全社協働して省力・省エネ事業の基盤強化に努めてまいります。

これら事業を中核事業に据えるとともに新たな事業ポートフォリオの確立を図り、2035年までに既存事業領域と合わせて売上高1,000億円を達成すべく、取り組みを進めてまいります。

Scope1、2の削減ロードマップイメージ

Scope1,2の削減ロードマップイメージ

環境への取り組み

当社グループは、日本の化学工業発展の歩みとともに、水質汚濁防止、大気汚染防止などの分野をはじめとした環境改善関連の装置・設備の設計・製作・据付を行い、環境保護に貢献してまいりました。地球環境の保護が全人類の最重要課題の一つであることを認識し、持続的に発展できる経済社会の実現に対し、全社一丸となって環境負荷の継続的低減を推進します。

川崎市湾岸エリア初、川崎製作所にカーボンニュートラル都市ガス導入

当社川崎製作所に東京ガス株式会社が供給するカーボンニュートラル都市ガス(以下:CN都市ガス)を2022年2月1日から川崎市湾岸エリアでは初導入しました。これにより、同エリアでのCO2排出の削減に貢献するとともに、川崎製作所のCO2削減も見込めます。 同時に「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」へ加盟することになりました。

CN都市ガス導入により、川崎製作所として年間約475t/年のCO2削減ができ、同製作所から排出されるCO2は約20%弱削減となります。当社グループは、モノづくりとエンジニアリングを通して、CO2・気候変動、資源循環等の社会課題解決に貢献するべく、事業活動を推進してまいります。

カーボンニュートラルLNG(CNL)

出典:カーボンニュートラルLNGウェブサイト

<CN都市ガス 供給概要>

  • 供給サイト:三菱化工機株式会社 川崎製作所(川崎市川崎区大川町2-1)
  • 供給量:約166,000m3 / 年
  • 供給開始日:2022年2月1日

環境対応への投資

SDGs債への投資を継続的に実施することで、持続可能な社会実現への貢献を進めています。2021年度より投資を続けており、5件の実績を有しています。

【2021年度】

  1. 神奈川県第2回5年公募公債(グリーンボンド)
    年限:5年 / 発行総額:100億円 / 利率:0.001%
  2. 三重県令和3年度第2回公募公債(グリーンボンド)
    年限:10年 / 発行総額:50億円 / 利率:0.269%

【2022年度】

  1. 第2回北九州市サステナビリティボンド10年公募公債
    年限:10年 / 発行総額:100億円 / 利率:0.379%
  2. 神奈川県第3回5年公募公債(グリーンボンド)
    年限:5年 / 発行総額:110億円 / 利率:0.2%
  3. 福岡市2022年度第8回公募公債(グリーンボンド・10年)
    年限:10年 / 発行総額:90億円 / 利率:0.76%

「バイオDX産学共創拠点」に採択

認証書

当社が参画する、「バイオDX産学共創コンソーシアム」(代表機関:広島大学、プロジェクトリーダー:広島大学ゲノム編集イノベーションセンター長・教授 山本卓)は、国立研究開発法人科学技術振興機構(通称:JST)による産学連携プログラム「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)・共創分野(本格型)」に『Bio-DigitalTransformation(バイオDX)産学共創拠点』として採択されました。本採択を受け、三菱化工機川崎製作所内に本プロジェクトに用いる微細藻類の屋外培養装置を新たに設置し、コンソーシアムメンバーとともに10年間という長期にわたり研究開発を行うこととなりました。

自治体の認証制度へ登録

自治体が行うSDGs関連の認証制度への登録を推進しています。現在は川崎市で最上位のゴールドパートナー、横浜市で上から2番目のSUPERIORへ登録されています。